全員悪人! 一番悪いのは誰だ!?
本書は、てぃーえー(@ta_castlepoint)氏の艦これ二次創作小説シリーズです。
表紙のトーンからしてまんまラグーン悪徳と暴力の臭いに満ち満ちています。どんな物語が展開されるのでしょうか。
事情や設定がやや込み入っているので、既刊(001)から読むのがオススメです。PDFでの頒布があるそうなので、上記Twitterアカウントなどでコンタクトしてみると宜しいでしょう。私もそのようにして裏取引入手しました。
はぁ、摩耶様。
主人公にして「提督」、前原誠一は元サラリーマン。
それがよんどころない事情から艦娘の指揮官となっていくわけですが、特筆すべきはそのスタンス。
「摩耶(と高雄型姉妹)に赦されたい」
ボーイミーツガールの甘酸っぱさなんか微塵もなく、ヒトとかモノとか共存とか対立とかそんな概念ぶっ飛ばしてこれです。初代秘書艦・電をして「性癖の複雑骨折」と言わしめる倒錯ぶり。なんとなく長谷川ナポレオンでヴィスコンティ夫人を崇拝するベルティエ参謀長を彷彿とさせます。
何でも、何時でも、何処までも。
本書独特の切り口が、「商社」というカヴァー。深海棲艦の脅威もものともせずにデリバリー。
売り口上だけ読んでると、マッコイ爺さんと喪黒福造が手に手を取ってラインダンスを踊っているようにしか見えない胡乱さですが、堅実に、リアルに商売をこなしていきます。貿易と企業法務に関するネタは結構マニアック。
納期は厳守。支払は絶対。
契約は絶対のルール。それが破られたとき、その時は――
我々の都合で戦争を行い、我々の都合で平和を守る。
NTCLのモットーです。綺麗なお題目は屑籠にポイです。
「たまには御法に触れることもする」どころではない荒事も、全ては「生きる」ため。
ありとあらゆる手を使い、彼等・彼女等は業務に、戦争に邁進していきます。
Finest "Drop"
NTCLの構成員の多くを占める「ドロップ」。
それは艦娘の出自の区分であると同時に、主人公達が社会からドロップアウトした存在であることも示しているように思います。
ゆえにその個性は規格外。
触れなば斬らん。人と会っては人を斬り、神と会っては神を斬る、高雄をはじめとする高雄姉妹。
狂人の真似をしたら実際狂人。狂気の狂言回し、巻雲。
その他、頭のネジがぶっ飛んだ実に個性的な艦娘達が所狭しと活躍します。
しかし、凶暴なようで冷静、粗暴なようでいて細やかな機微に通じた摩耶様には別格の愛情を感じます。はぁ、摩耶様。
そしてラスボス、大和。
童女の無垢さと神がかったスペックを持つ彼女こそ、深海棲艦よりタチの悪い存在であると言えましょう。コイツに比べたらメフィストフェレスなんか救世軍の大隊長だ。
まとめ
連作ということもあって、やはり既刊の知識はあった方が楽しめます。
通して読んでみると、皆ぶっ壊れているようでいて、実に真摯に『生きて』いることを感じさせてくれます。
そんな人間くささと痛快なアクションの行き着く先を、是非見届けてみたい。
そう感じさせてくれるシリーズでした。