C96感想:「君の瞳」

樋渡りん先生の新刊を入手!

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昨年の「冠さんの時計工房」から目が離せなくなってしまった、樋渡りん(@hiwataririn)先生の新刊を手に入れました!

「冠さんの時計工房」はWeb連載から単行本化も決定! 嬉しい限りです。


そう、彼女の瞳はまるで――

主人公が、「気になる」クラスメイトと心を近付けていく過程のお話。

ほんの小さなきっかけの重なり合い。

すれ違う片思いのもどかしさ。

その心の動きはまさに繊細のひとこと。


先生、これが百合でしたか

私、これまで百合というものが理解できませんでした。

何かっちゃレズカップルとしてくっつけ合う風潮が百合とも思えず。

「肉食獣が睨み合ってたら百合」とか「エモい風景は全部百合」とか、論理不明の牽強付会にも付いていけず。

しかし、本作の繊細な心の動きと、一歩を踏み出すちょっぴりの勇気が紡ぎ上げたラスト、そこに華咲く百合を視ないか、と言われたら、私にもぼんやりとそれが見えてきた……ような気がします。

その意味では、私の蒙を啓いた一作と言えるでしょう。


マニアックな描写も健在。

主題とのマルチミーニングとして作品の一角を支えている硝子細工。

その工房の描写が、これまた非常にマニアック。

私には専門外ですが、それでも描き込まれた道具の数々が放つ「本物」の雰囲気は感じ取れます。

例によって、その作業はモノローグひとつなく淡々と描かれる贅沢さ。

ただのオタクだったら、ここに講釈というハチミツをぶっかけて台無しにしているところでしょう。


その美しさに、心奪われて

「冠さんの時計工房」もそうですが、とにかくストーリーが「美しい」。

印象的な風景が、匠の技が彩りを添える。

そこには余計なモノが何一つない。

私が個人的に最も凄味を感じるのは、「携帯電話もLINEも登場しない」ということ。

時代を超えて普遍的な「心の描写」に特化した、実にストイックな作品と感じました。

これからの作品にも目が離せません。

……あと、たん旦先生とのツイッター芸にもwww



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