アンティーク懐中時計を扱う上でのお約束
まず、アンティーク懐中時計を扱う上でのお約束をいくつか挙げておきます。
決して無理をしないこと。
機械式時計は精密機械です。何かが引っかかったり、スムーズに動かないと感じた時はそれ以上動かさないのが鉄則です。無理に力を加えたりすると、それがトドメの一撃となって機械を大きく破損する可能性があります。
労りを持って扱うこと。
ほとんどの場合、現行品のような耐震機構、防水機構などは備わっていません。くれぐれも無用な振動や衝撃、水気に晒されることのないように気を配りましょう。
…などといちいち禁止事項を並べ立てるよりは、「労りと愛着を持って扱うこと」を常に心がけることが大切だと思います。半世紀~百年単位の時間を経てきたアンティーク時計。その寿命が手元で尽きてしまうことのないよう、大切に扱ってあげましょう。
ゆとりと寛容を持って接すること
精度だけを考えるなら、アンティーク懐中時計などよりクォーツ時計、電波時計をお勧めします(笑)。携帯電話のディスプレイでもいいでしょう。
むしろ、ゼンマイの巻き上げや時間合わせといったひと手間を生活の一部として楽しむだけの心の余裕があって初めて、機械式時計を愉しむことが出来るのではないかと思います。
また、アンティーク、あるいは骨董という言葉を使うと聞こえは良いですが、一面では「中古品」であることもまた事実です。製造当時のままの状態を完璧に保っていることは稀で、多くの場合は相応の使用感があったりします。あまりに見苦しい瑕や使用に耐えないほどの損傷は別ですが、多少の使用感は、それが「アンティーク」と呼ばれるようになるまでに重ねてきた時間の証として受け入れてあげたいものです。
(ただ、何から何まで「アンティークだから」と甘く見ろというわけではありませんので、念のため)
つまりは、「時間と戦う」というギスギスした現代風のメンタリティではなく、「時間と付き合う」といった少しノスタルジックな心のゆとりこそが、アンティーク時計を愉しむために必要なものではないでしょうか?
(実用ではなく観賞用のコレクションと割り切る場合はまた少々話が違ってきますが、それはまた別のお話ということで…)