古時計再生の巻。
長らく手を着けていなかったクロックの修理を今日こそやろうと一念発起してみました。
■分解と洗浄
まずは分解です。二枚の板で部品を挟み込む構造なので、分解自体はどうということはありません。ただし、後で組み立てる時のことを考えて部品の配置はきちんと控えておく必要があります。まあ、時刻側(時廻り輪列)と時報側(打廻り輪列)の歯車を混ぜさえしなければ大丈夫ですが。
分解した部品はベンジンで洗浄します。ホームセンターで適当に調達しましたが、小瓶入りのものしかなく、こういう用途にはいささか量が心許ないのが難点。背に腹は代えられないのでそのまま何本か買い込みました。
洗浄に使うのはブリキのバケツと豚毛の刷毛。部品はどれも手でそのまま扱えるくらい大きいので、超音波洗浄器のような大仕掛けは必要ありません。
豚毛であることに特別な意味はありませんが、毛の硬い天然素材のブラシであれば良いでしょう。ただ、ベンジンを使うので化学繊維は避けておいたほうが無難かも。
バケツの中で歯車をベンジンに漬けてわしわしと刷毛洗いします。仕上げもへったくれもない部品なので洗浄前後でそう代わり映えするわけではありませんが、残ったベンジンは相当に汚れていました。なので一回汚れたベンジンを替えてすすぎ洗いを追加。
地板も併せて洗浄しますが、ホゾ穴の汚れは刷毛だけで取りきれるかどうか怪しかったので、凧糸を通してからベンジンを浸して穴の内側を拭ってみました。
洗浄後は紙の上に並べてしばし乾燥。ベンジンなので特に待つ必要もありません。ちゅーか使ったベンジンの八割がたは使用中に揮発してしまいました。換気には注意しないといい具合にラリってしまえます。
■組み立て
さて、一番困難が予想されるのは組み立てです。
今回の悩みの種はゼンマイの始末。このクロックは香箱を持たず、釘ゼンマイという端が筒になったゼンマイを、むき出しのまま直接地板を繋ぐ柱に通して組み込むタイプです。
クロック用のゼンマイは力が強く、組み込むのも一筋縄ではいかない上、万一弾けると怪我をする可能性大です‡1。
そこで、部品調達の際にMasa'sで貰ったアドバイスに従い、ゼンマイを針金で縛りつけることにしました。
まずは地板の下側にゼンマイと一番車だけを取り付け、地板は膝の間にしっかり挟み、片手でゼンマイが上下に飛び出したりしないよう整えながら巻き上げます。巻き上げて小さくなったところで、ゼンマイに予め準備した針金をかけて縛ってしまいます。これが弾けるとえらいことになるので、針金は二回かけておきました。
拡がったゼンマイを、地板に直付けされている突起物に引っかからないよう、さらには一瞬たりとも力を抜かずに巻き上げる……実はかなりの力技です。あんまり他人様にはオススメできないかも。
これをやる際には事前の準備と思い切りが必要です。針金やペンチの用意はもちろん、一気にやり切ってしまわないと、手が疲れてゼンマイ暴発の危険大です。特に、途中で諦めてゼンマイを戻すのは禁物と感じました。手で押さえたままゼンマイを解くのは、巻き上げに数倍する力を要しますし、持ち替える際に手を滑らせると即暴発です。
針金は最後の最後に切断して取り除けばいいので、そのまま進みます。
まずは時廻り輪列(ついでにシュモク(リンを叩くハンマー))を組み込み。ゼンマイからの動力は当然供給されませんが、手で直接歯車を回せば動くので、輪列がきちんと噛み合っているか確認しながら組み上げます。なんせ二枚の板で挟むだけなので、仮止めしながら板を拡げては一つ一つ歯車を押し込むような感じになります。なんか力任せで気に入らないけど、全ての歯車をセットして一発で決めるのはほぼ不可能なので妥協が必要。
次いで打廻り輪列の組み込み。実はこれが意外と難物で、単純に歯車を組み付けるだけでは動作しません。数取り歯車に噛み合う数取りカマやシュモクなどのレバー類が、歯車に取り付けられているカムやピンと連動するようにしなければならないのです。
こればかりは見ただけでは何ともならないので、打ち始めの位置を想定して歯車の初期位置を決めながら組み込み、あとは一番車を手で回しながら意図通りに動いてくれることを確かめていきます。正直なところ、歯一枚分の噛み合わせの違いからデッドロックみたいな状態に陥るので、小一時間ばかり試行錯誤。
アンクルを外しておけば時廻り輪列は規制されないので、歯車を手で回しながら輪列の連動を再度チェック。いよいよ大丈夫、となったらアンクルをセットし、ゼンマイを拘束していた針金を切断して取り除きます。針金を切った瞬間ゼンマイがドカンと広がらないよう、針金切断前にゼンマイはさらに巻き上げておいた方が良いかも。
実はこの段階で時廻り輪列用のゼンマイを反対向きに取り付けていたことが発覚し、一から組み直した事は抜群に秘密です。orz
ゼンマイの拘束を解くと、早速アンクルの竿が振れ始めます(振り子本体が付いてないので通常の数倍のスピードで動く)。この状態で本体に一度取り付け、打廻り輪列を動かした時に打玉がリンを叩いて音が出ることを確認します。いい加減に突き出た針金にしか見えないような部品がきちんと音を立てているのにはちょっと感心。
動作自体は何とかなったようなので、取り外して注油を行います。
大雑把な機械なので、懐中時計や腕時計のようにオイラーを使った精密な注油は行いません。ゼンマイと併せて調達したクロック用のオイルを、面相筆でちょいちょいとホゾ穴に注油してやります。ガンギ車の歯とアンクルの爪にも薄く油を塗ってやり、最後にゼンマイにも注油。差し過ぎて油浸しにならないように注意。
最後に本体に取り付け、文字盤と針を取り付ければ完成です。
■ひとまず完成
かくして、クロックの修理はひとまず完了しました。実用しようと思ったら微調整は必要だし、遊びが増えてグラグラする分針の取り付け部分にも手を入れる必要があるし、そもそも物置から自分の部屋に持って来なければいけないというのはあるのですが、それはおいおい手をつけていこうと思います。
仕上げも何もあったものではない大雑把な機械ではありますが、それゆえ機構は単純明快。カチリと正時を指したその瞬間、時計の内部で何が始まり、どうやって時計が時を告げているのか、少し解ってきて実に良い勉強になりました。
もっと小型で精密な懐中時計や腕時計をどうこうするにはまだまだ先が長いですが、自分の力で完全な分解整備をやってのけたという事実には、ちょっとした満足感を味わえます。
なんだかんだでかかりきりになってしまいましたが、こんな週末もいいかと。
- ‡1: これよりはるかに小さいオルゴール用のゼンマイでも、過去にコハゼがいかれて鍵が突然逆転した結果、爪を叩き割られてホラーショーなことになった経験があります(痛い話)。